彗星のてんぷら

あげたての星からはイマージュの匂いがする

ドストエフスキーオタク、韓国のイワン・カラマーゾフに会いに行く

 今年も残すところあと二週間あまりとなりましたが、「まだ2023年のターンは終わっていないぜ!」と山積みのやりたいことを消化中のかかり真魚です。楽しみにしている#ぽっぽアドベント2023 の開催、本当におめでとうございます! 主催のはとさんのご尽力とお人柄で、またこのような素晴らしい場を多くの方と共にできる幸せを噛みしめています。本当に連日楽しくって……楽しくって!!! なお、これまでの素敵な記事はこちらからどうぞ。

adventar.org

ちなみに、昨日担当のKiEさんの記事は(G)I-DLEにハマった話と韓国語学習を始めた話でした。わたしも(G)I-DLE大好きなので大歓喜で読ませて頂きました。媚びない女のパワーに溢れたアイドルで本当に格好良いですよね。ちなみにわたしの記事も韓国エンタメと韓国語学習の記事なので、ガッツリバトンを受け取ります!!!

sasanopan.hatenablog.com

 ということで今年のテーマは「NEW WORLD」。
 一昨年の記事でご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、わたしはドストエフスキーオタクでして、以前はドストエフスキー生誕200年祭にまつわる喜びの記事を書かせて頂きました。

kakari01.hatenablog.com

 この最後の方に、韓国ミュージカル「ブラザーズカラマーゾフ」との衝突と韓国語の勉強を始めたことを書いていたのですが、実は今年、韓国にて本作の再公演があったのです。で、遂に渡韓して生で見てきたのですが、折角なのでわたしがこのミュージカルに衝突して韓国語を勉強した軌跡とその実践編について書こうかなと思います。
 全く知らない言語を一から始めて外国まで推しの同人誌(翻案作品と言いなさい)を観に行く体験、ほんとNEW WORLDだったんですよ。
 ぽっぽアドベントがお休みだった昨年から今年までの話です。
 なお、この記事は一万五千字くらいあります。(相変わらず長い)

1 出会い
2 ハングルとの戯れ~TOPIK2級取得
3 韓国語オンライン授業&韓国人の友達を作ってみよう
4 初めての渡韓
5 遂にやってきた「ブラザーズカラマーゾフ再演」の知らせ
6 韓国のイワン・カラマーゾフに会いに行く
7 これから

2023年版公演のブラザーズカラマーゾフのポスターです。ビジュアルが強い。

1 出会い

 詳しくは過去の記事を読んで頂けたら良いのですが、ざっくり紹介すると韓国ミュージカル「ブラザーズカラマーゾフ」とは、ドストエフスキー著作『カラマーゾフの兄弟』を凡そ一時間半程度に凝縮した初演を2020年とする韓国のオリジナルミュージカルです。「登場人物がしぬほど多すぎて名前も覚えられないんだけど?」というドストエフスキー後期長編にありがちな難点を「お父さんと四人の息子たち」という五人の登場人物に絞込み、更に物語をフョードルの葬式から始めるという、謂わば『タイタニック』で例えると既に船が沈み始めた時点から始めるという画期的な省エネ戦法により物語の旨味を凝縮することに成功した作品です。
 あまりにも凝縮が過ぎて、原作のシーンを忠実に再現するというよりはエッセンスを再構築するという方向に舵を切っているので八割が原作にないシーンで出来ているみたいな感じなんだけど、まあ上手すぎて最初は気付かなかったよね……という、なんかもうオタクの夢みたいなミュージカルなんですよ。同人誌ですよ(ミュージカルだよ)。
 そして、韓国の芸術分野の豊潤さはご存じのとおりで、ミュージカルにおいても兎に角ハンパない、マジでハンパないクオリティが実現されているのでございます。
 ありがてえ~~~~~~カラマーゾフ万歳!!!!!!(※大地に接吻しております)
 ということで、たまたまYouTubeでまとめ動画を目にし、ついでに運良く配信において全編の視聴に成功したわたしは、当然ながら病的な興奮に陥りました。ちなみに配信には字幕がついてなかったのですが、神さまみたいな方が日本語訳の束を下さったので、それを捲りながらの視聴でした。
 ちなみにわたしのカラマーゾフでの推しカプ、冷淡で無神論者きどりの秀才な次男坊イワン・カラマーゾフと、屋敷の使用人でカラマーゾフ家の庶子ではないかとの噂をもつスメルジャコフの二人組なんですが、本作の配信があったやつの劇中では、二人の間の緊張感が最高潮に達したその瞬間、スメルジャコフがイワンの頬に手を触れながら「나의 이반……(わたしのイワン)」というシーンがあったんですよね。
 当然、原作にはマジで影も形も存在しないシーンなので、(わたしは何を見せられてるんだ?)(生きてるといいことがあるな)(俄には信じがたいシーンすぎる)(有り難う韓国、有り難うブラザーズカラマーゾフ)(イワン・フョードロヴィチがえっちすぎる)と混乱状態に陥りながらぶかま(ブラザーズカラマーゾフの省称)の先輩であるいよさんにDMを打ちました。(以下、要約)

 私「あのシーン、すご、えっ凄いんですけど……ぶかま凄くないですか???」
 いよさん「あれ、スメルジャコフ役のパク・ジュンフィさんのアドリブなんですよ」

 えっ、アドリブ?
 アドリブなんてあるの?
 っていうか、そんな強火のアドリブ入れるとかある??????

 後に判明したのですが、インタビューなどを見るにスメルジャコフ役のジュンフィさんはかなりのスメイワ強火勢っぽくて、解釈も二人の関係性に重点を置いたものになっているようです。そもそも韓国のミュージカルにおいては一役にトリプル起用なども珍しくなく、つまり日夜さまざまな組み合わせで公演され、あらゆる役者解釈や表現などがその日その日で絡み合う、まさに生きた芸術ともいうべきものだったのです。
 本作に魅了され、いつか生で観劇してみたいなあと思っていたわたしにとって、この自分の心臓をシベリア鉄道で微塵に轢圧したともいうべきワンシーンが「台本に載ってない」という事態は衝撃的でした。
 原作にもなく、また台本にも載ってない部分で発生する、細やかで豊かな解釈と表現力が「ブラザーズカラマーゾフ」の素晴らしさの一端を担っていたのです。
 この素晴らしい作品を堪能するには、役者が表現する細かな部分までを拾い上げる言語力が必要なんだ……。よし、韓国語勉強しよ!!!! そして「ブラザーズカラマーゾフ」再演の暁には、スメイワスメのあらゆる濃淡を含む旨味を心ゆくまで堪能してやるんだから!!!!
 という経緯などがあり(また韓国のオタクがハングルで書いた凄まじい量のファンフィクションの存在も見過ごせず/夢かと思った)十九世紀ロシア文学のオタクであるわたしは、突如韓国語の勉強をするようになったのです。

(因みに補足ですが、わたしは現行の受け攻め文化及びCP表記に遺憾の念があるので、以下に登場する「スメイワ」は「スメルジャコフ/イワン」のスラッシュ表記、或いは「キキララ」みたいなコンビ呼びだと思って頂けると幸いです/こんな剣呑なキキララがあってたまるか)

 

2 ハングルとの戯れ~TOPIK2級取得
 今、韓国語を勉強し始めて二年少しなのですが、恐らく言語の極意は「モチベーション維持」です。地頭の良さなども当然ある程度は関係あるのかも知れませんが、一般的に見て、やはりどれだけ長く楽しく続けられるか、という点が重要なように思います。
 ということで、韓国語の勉強を始めたわたしが最初にしたことはノートと単語帳をデコることでした。

 かわいい!!! デコの才能がある!!!
 デコっているあいだにハングルのひとつでも覚えられるんではないか、という感じかも知れませんが、形から入るタイプのオタクなので許して下さい。
 ちなみにわたし、学生時の勉学のほうはからっきしで、授業が六時間あるとそのまま六時間寝ていたタイプの人間でした。嘘です、体育の時間だけは起きてました。ただ、昔からハマったことに関しては脅威のパワーを発揮するところがあるので、「韓国語にハマることができれば勝算があるな」と思っていました。
 韓国語を趣味にしよう。鬼退治にハマって二度と島に戻ってこなかった桃太郎のように……韓国語にハマるしかない!!!!(※そんな桃太郎は存在しない)
 ちなみに、KPOPや韓国ドラマの流行もあり、世には韓国語を始めたいという人間向けのコンテンツや教科書に溢れているため、わたしのようなこれまでマトモに語学をしたことのない人間でも(わたしの英語能力は壊滅的です)簡単にアクセスすることができます。周囲の韓国語学習者の先輩方からおすすめの教材なども教えて貰いながら、環境を整えていきました。なお、学習計画というほどのものではありませんが、半年後くらいにある韓国語能力試験(通称TOPIK/トピック)の初級合格を目指して、まずは独学でハングルの会得と初級文法、初級単語の勉強を始めました。
 この時期は本当に勉強が楽しくて、すごく毎日がうきうきだったのを覚えています。
 ちょうど仕事で就いていた部署が忙しく、朝の六時には家を出て、帰ってくるのは午後九時半を回っているという家でご飯掻き込んでシャワー浴びて寝るしかない、休日もしんどすぎて起き上がれない……みたいな社畜生活にどっぷり浸かった状態のときだったのですが、「ブラザーズカラマーゾフが凄い!!!」「韓国語が出来るようになりたい!!!」という病的な興奮によりギアが完全に振り切れたわたしは突然ヤバイくらい元気になってしまいました。
 勉強時間を確保したくて、帰宅後は爆速でやることをやって一時間くらいは机に座り、通勤時間も聞き流しや学習アプリを使って単語を覚えていきました。本当に毎日疲弊していて、「やりたいことはたくさんあってもどれも手が付けられない……」という状態から、「何を置いても韓国語がやりたい!!!」という状態に移行できたのは本当によかったと思います。無数にあるやりたいことに優先順位を付けられたのも良かったんだろうな。

 独学韓国語学習者の神器のテキストと言われる『できる韓国語 初級』をコツコツ解いて、上下二冊をやり遂げたときはとても嬉しかったです。
 でもまあ、復習しないと忘れるんですよね。二冊終えたときには、二冊目の半分以前の内容は全て忘れていたと思います。
 ちなみに、この初級テキストが終わった時点で、目標のトピック試験までは一ヶ月くらいしか残っていませんでした。「マジで? 絶対間に合わないが?」と思いながら試験用の参考書を買い、過去問を解こうとするも単語数が足りてないみたいで全然分かりません。急遽、トピック試験対策用の初級単語集も買い足して、この一ヶ月は今思い返してもマジでめっちゃ勉強していたと思います。
 試験直前の過去問模試、本番さながら時間も測ってしぬおもいでやってみたら自己採点は148点でした。(2級合格は150点以上)
 「あと2点を絞り出すしかない……わたしの身体のどこかから……!!!!!!」
 こんな感じで全然間に合ってないままに韓国語能力試験の会場に赴きました。
 ちなみにこの試験、初級の1級から始まって上級が6級までという試験になっています。
 まさか自分が趣味で語学検定を受けるようになんて……長くドストエフスキーオタクをしていると色々なことが起こるなあ、と思いながら会場入りし、当然余裕のない実力で望んだので時間は足りないは集中力は焼き切れるわで、本当に大変な思いをして試験を受けました。ちなみに初級検定は読解と聞き取りで、特にわたしは聞き取りが笑えるくらい分かりませんでした。
 全く手応えのないまま試験が終わり、「もう二度と受けたくない……」と試験というものを受けた後には必ずやってくる感情を例に違わず噛みしめ、家に帰りました。
 一ヶ月後に試験結果の発表がありました。

 すごい滑り込みで受かってました。153点!!!
 絞り出せた~~~~!!!!わたしの身体から5点が出てきたぞ!!!!!!!!
 この喜びは本当に、とても大きかったです。正直、実力的にはマグレもあったんじゃないかと思うのですが、半年間地道にやってきたことに「合格」というかたちが与えられたのはとてつもない喜びでした。
 ちなみに最初の方にもちらっと書きましたが、ブラザーズカラマーゾフ、実は二次創作も豊富でTwitterやポスタイプ(韓国のpixivみたいなやつ)で色々読めるのですが、如何せん全て韓国語なので爆速で韓国語をマスターしないと翻訳機を通じてしか、それらを読むことが出来ません。つまり韓国語が読めれば韓国のオタクが書いたスメイワが読めるってこった!!!(なお参考ですが当時pixivでスメイワ小説は六件くらいでした。このオタクの凄まじい飢えをお察し下さい)
 爆速で韓国語が必要なんです、わたしには、本当なんです!!!!!! ということで、オタクは次のステップに進むことにしました。

※なお、この春先にロシアのウクライナ侵略が始まり、精神的に本当にキツい時期が続いたりもしました。このあたりの話は昨年別のブログでちょっと書いたので、ついでに貼っておきます。一時は「このままインターネットでロシア文学の話をし続けていいものだろうか」とかなり悩んだりもしましたが、沢山の人から言葉を貰い、また再びぶかまのNAVER放送を観たりして、打ち拉がれから立ち直るきっかけを頂きました。NAVERでの再放送ついては完全に偶然なのかも知れませんが、日々ニュースから流れてくる戦場の凄惨な様子、また別の部分では日本のロシア料理屋さんが襲撃を受けるなどのニュースを見て何重にもショックを受けていたわたしにとって、皆さんの言葉やこの時期の再放送は、わたしの大好きなドストエフスキー作品、また『カラマーゾフの兄弟』という作品のメッセージや意義を見直すことに繋がりました。自分の立ち位置を改めて考え「今のロシアのウクライナ侵略について断固反対し、ウクライナを支援することが、ドストエフスキーやロシア文化をこれまで愛してきた自分にとって出来ることなんだ」と思いを新たに出来ました。一日でも早いウクライナ侵略の終結、更には別の地域で行われている侵略、ガサ地域への侵略が終結することを切に願います。

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3 韓国語オンライン授業&韓国人の友達を作ってみよう
 TOPIK2級の合格ラインは「簡単な日常会話程度ができる」となっていますが、では2級を合格したからと言って日常会話が出来るかと言ったら、全然です。っていうか皆無です。そもそも韓国語は日本語に比べて発音がめちゃくちゃ多いので、文法や単語の他にこれらも習得する必要があったりします。語学のブログなどを漁っても、やはり語学学習においては発話練習が非常に重要と書かれていました。
 ということで、ドスオタはオンラインレッスンを受けることにしました。
 コロナの影響もあって、ちょうど語学のオンラインレッスンが全盛期だったかもしれません。わたしが申し込んだところは講師の数が多くて、どんな時間帯でも授業が受けられるというところが良かったと思います。頑張れば、仕事が終わった午後十一時からでもレッスンに入れる! でもまあ、結局は大体土曜にとかに受けていたのですが……講師は毎回選べたのですが、何となく同じ先生に観て貰う方がいいかなあと思って継続で一人の方に見て貰っていました。教科書に沿って音読したり、パワーポイントを見て文章を作ったりという感じで内容としては初級文法の振り返りって感じもありつつ、それなりに楽しくレッスンを受けていました。ちなみに、「じゃ、今からあなたが乗る飛行機の横の席にBTSのメンバーが乗ってたとして、ちょっと口説いてみて下さい」という、そんな状況ないですけど???!!! みたいなロールプレイングも結構やりました。すみません先生、わたし多分日本語でも無理だと思います。


 平行して、テキストは『できる韓国語 中級』を始めつつ、更にもう一つチャレンジしたかったのが「韓国人の友達を作る」ということです。
 Twitterでは既にドストエフスキー関係や韓国ミュージカル関係のトチン(韓国語でTwitter繋がりの友達のこと)たちがいたのですが、如何せんわたしのよわよわ語学学習に付き合って貰うのが申し訳なかったので、語学アプリ『hellotalk』で探すことに。
 hellotalkは言語交換アプリで、ネイティブとチャットや会話をしながらお互いの学習を助け合える(しかも無料)という、有効に使えば非常に有能なものです。
 出会い系目的の人間もいてトラブルも皆無じゃないようなので、ちょっと使い方は気をつけなければいけない部分もありますが、如何にわたしの見極めを乗せておくと
 ・ アイコンが動物かアニメ(アニメは線が少ない絵柄のやつだと尚良い)
 ・ 同性でプロフィール覧に「恋愛求めてません」と明記してある
 ・ 日記をマメに書いており、添削や質問を積極的にしている
ような人を見つければ、ややこしいトラブルになることは少ない気がします。
 当然、合う合わないもあるので、連絡を取ったすべての人とやりとりが続くわけではありませんが、一期一会を求めて気になるひとにコミットしてみるのも楽しいです。ちなみにわたしが最初に仲良くなった子は、偶然にも俳優ク・ギョファンの大大大ファンであり、最早わたしの初級文法のアウトプットはク・ギョファンのお陰で伸びたと言っても過言ではありません。「『ウ・ヨンウ』のクギョファン回観ました、めちゃ良かったです!」「すごく可愛いでしょう~!!!私も何度も見ました」「あんなの、みんなが見たいクギョファンじゃないですか?」などの会話を日本語と韓国語で共に書き、それを互いに訂正し合うという形で会話していました。
 なお、折しも日本ではク・ギョファン主演の『なまず』という映画が封切りになっていました。それらについて話し合っている途中で知ったのですが、映画大国と言っても良い韓国には「パンフレット」の文化がないそうなのです。そして当時、我々はクギョファンや野木亜紀子ドラマで意気投合していたので、
「あの……もし個人情報とかが大丈夫であれば、国際郵便で送りましょうか?」
「えっ、いいんですか?」
 という流れになり、折角なので上限を決めてお互いの欲しいもの等を送り合おうという国際郵便プレゼンツが発生したのでした。
 国際郵便なんて送ったことないよ~!!! と色々調べながらのチャレンジでしたが、本当に楽しくて良い思い出になっています。友人はサンリオやちいかわグッズが欲しいとのことで、パンフレットに加えてそれらのグッズを購入し、更にはブラックサンダーじゃがりこなどの日本のお菓子、そして拙い韓国語で書いたお手紙を添えて送りました。

ものすごい量の韓国映画のフライヤを送ってくれて大歓喜でした。宝物です。

 友人からわたし宛に届いたものがこれです。
 韓国語版の『カラマーゾフの兄弟』に加えて、たくさんの映画のフライヤ、韓国のお菓子などを送ってくれました。当時、まだ韓国に行ったことのないわたしにとって、この贈り物は本当に嬉しかったです。
 ちなみに、今はもうこの友人とのやりとりは途絶えているのですが、他に二週間に一度くらいの頻度で電話する同年代の友達が出来たり、韓国ミュージカル繋がりの方とお話しできたりと色々出会いがありました。
 Twitterでやりとりしてくれる友人方も含めて、やはり他国の友人が出来ると言うのはそれだけで世界が広がる気持ちになります。文化や言葉の差も含めて、彼らと関わり言葉を交わすことは、とても楽しくて嬉しいことです。


4 初めての渡韓
 初めての渡韓は、昨年末から今年正月に掛けてでした。そう、実はわたし、今年は韓国で新年を迎えていたのですね。
 「ブラザーズ・カラマーゾフ」でイワン・カラマーゾフ役だったアン・ジェヨンさんが、これまたわたしの好きな韓国ミュージカル『女神様が見ている』に久々にキャスティングされると聞いて、居ても立ってもいられなくなったわたしは渡韓の決意をしました。
 初めての韓国、そして個人旅行、更にマジで誰も同伴者なく一人で行くんだが?
 と不安要素満載の見切り発車も良いところだったのですが、どうしてもアン・ジェヨンさんの生舞台を大好きな作品で見てみたいという欲望と、「もしブラザーズカラマーゾフが再演になったときの予習を一回しておきたいんや……!」という切実な気持ちにより押し切りました。この初渡韓には、チケット取りやホテル手配を含め、国内外の韓ミュオタクの友人達の助けを本当にお借りしまして、いくらお礼を言っても足りないくらいです。
 ちなみに、この渡韓及び観劇については、別にブログがあるので貼り付けておきます。

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 「アンニョンハセヨ~(こんにちわ)」「イゴジュセヨ(これください)」「カドゥロハルッケヨ~(カードで支払います)」など初歩中の初歩の会話能力を握りしめて行った韓国でしたが、本当に楽しかったです。簡単な会話が通じる、駅の表示が読める、などの些細なことでも、自分が今までやってきた韓国語がちゃんと息をしているのを感じられて、飛び上がるくらい嬉しかったです。
 しかし一人旅、ほんと食堂に入るだけでもめっちゃ勇気がいる。
 着いたその日は決心が付かず、ロッテリアでプルコギバーガーを食べたりしました。安心安全のパネル注文!日本語対応あり! プルコギバーガーは美味しかったです。(そのあとちゃんと食堂にも体当たりチャレンジしました。韓食大好きなのでめっちゃ堪能しました……ああ、また韓国に行きたい)
 ミュージカルも二作見たのですが、それぞれ日本語字幕配信で視聴済み、原作読了済み、と物語が頭に入っている状態だったので、その場の聞き取りがふにゃふにゃでも何とかなりました。
 アン・ジェヨンさん、ほんとめちゃ歌ウマお兄さんなんだよな……(良かった!)
 事前に用意しておいた韓国語で書いたファンレターも無事に渡せて良かったです。今回の舞台のことと、ブラザーズカラマーゾフを観たときの感想も合わせてかなり長文で書いたものでした。(ちなみに表現が不安なので、「ココナラ」というアプリで韓国語が堪能な方にチェックしてもらいました)
 舞台は本当に素晴らしかったです。とはいえ、これらを現地で生で見てもしっかり楽しめるくらいの韓国語能力が欲しいんだよなあ、自分の実力はまだまだだなあということもしっかり感じました。
 そしてこの渡韓中に、わたしは知らせを受け取ることになります。明洞の伝統茶のカフェでなつめ茶を優雅にしばこうと思っていた矢先、TwitterのDMで送られて来たのです。
「2023年、春にブラザーズカラマーゾフの再演、決まったよ!!!!!!」
 思っていたよりめっちゃ早いんやが、と韓国で大パニックになりました。


5 遂にやってきた「ブラザーズカラマーゾフ再演」の知らせ
 今年の初めから半年くらいは、本当にブラザーズカラマーゾフで大パニックと言っても良いくらい気持ちがそぞろでした。
 この時点で、私の韓国語学習歴は一年ちょっと程度。そもそも「この春先に連休が取れるのか?」という部分も含め、何もかもが整ってなかったのです。
 わたしが整ってなければ、何だか公式も整って無くて、待てど暮らせど公式からの正式発表もなければキャストの発表もないという状態が続きました。(この時点での「公演決まったよ!」は、年間の韓ミュ作品スケジュールが一括発表になったやつに記載があったという意味でした)。そのため韓ミュクラスタからは「本当にやるのか?」「劇場押さえてるのか?」「前回の俳優、別の作品に取られてるが?」という何かもう大丈夫なのかよの空気もありつつ……いや、ほんとに公演一ヶ月前になっても、なんの音沙汰もなかったんですよ。本当に再演してくれるんだよね、果樹園!!!(製作会社) せめてアン・ジェヨンさんのイワン続投があるかどうかだけでも教えてくれ、果樹園!!!(製作会社) 海を越えるオタクもいるんだからね、果樹園!!!(製作会社)と思いつつ、とにかく出来ることと言ったら韓国語の勉強と無事に連休が取れるようにお祈りをすることくらいでした。

 なお、『できる韓国語 中級』はテキストとして非常に面白くなく、下巻の半分くらいまではやったのですが、途中で放り投げてYouTubeで学べるトリリンガルのトミ先生の中級講義動画を頭から見ることにしました。
 更に、この頃に一年くらいやったオンラインレッスンも契約満期を迎えます。続けることも出来たのですが、授業料が高いのと対面授業でもっと色々喋れるところがあればいいな~と思ったので、別の教室を探すことに。
 運良く、割と通いやすいところに会話重視の韓国語塾が見つかったので、そこに通うことにしました。韓国語を始めた当初とは部署も変わって、昼夕のレッスンが比較的受けやすくなったのも幸いしました。
 そして同時に始めたのが、ブラザーズカラマーゾフの台詞翻訳です。
 韓国のドストエフスキーオタクが、台詞を書き出したものを以前に個人用として送ってくれていたので、それを今一度自分で翻訳してみることにしました。
 当時「これで韓国語を勉強しますね!!!」と元気よく言ったわたしに「こんな暗い作品を教材にして大丈夫でしょうか……」と友人は心配してくれたりもしましたが、改めて見ると初中級の単語や文法も多くて、なかなか良い感じです。
 初めて「ブラザーズカラマーゾフ」に衝突したときは、友人の翻訳を見ながらの観劇でしたが、今こうして辞書を引きながらではあるものの、自分の手で翻訳出来ているなんて結構感動だな~~と思いながら楽しく作業しました。しかしこのミュージカル、本当に「無い記憶」で作られているんだな……(翻訳しながらの感想/原作に無いシーンばっかりである/オタクの幻視みたいな作品)
 そして二月の末頃、遂に公式から正式発表がありました。

ぶかまはスメルジャコフ推しなのでポスターもスメルジャコフである。スメルジャコフ推しのミュージカルと言うだけでもう頭一つ抜けてると言って良いだろう。

 発表おっそ、三月から公演はじまるんやが!!!
 そしてアン・ジェヨンさんは今回、出演せえへんのか~~~!!!!!
 悪役令嬢イワン・フョードロヴィチめっちゃ見たかったな……(アン・ジェヨンさんのイワンは物凄い高飛車で嫌味っぽい感じがするので「悪役令嬢みたい」と言われている)
 しかしもう、この再演に向けて勉強してきたといっても過言ではないドストエフスキーオタク、行かないという選択肢は存在しませんでした。
 レッツ・渡韓!!!!
 韓国のイワン・フョードロヴィチ・カラマーゾフを観に行くぞ~~!!!!
 ということで、遂に生ブラザーズカラマーゾフ観劇に向けて動き始めました。

 ちなみに超蛇足ですが、この時期には遂に念願の学習机を狭い1Kの家の隙間に滑り込ませることにも成功しました。可愛い空間なので見て下さい。

5 韓国のイワン・カラマーゾフに会いに行く
 わたしの身の回りにも、元々のドストエフスキーオタク始め、韓国ミュージカル「ブラザーズカラマーゾフ」のファンは多いのですが、今回は待ちに待った再演と言うこともあり渡韓して観劇するという人も多かったです。
 でも、みんな一人で行ったよね。
「なんか、一緒に行ったりしないんですね!?」と周りの方から声を掛けられたりもしましたが、上手く予定合わないし……でも行きたい気持ちは止められないのでもう各々一人で行きます、俺の骨は拾ってくれよなって感じでした。
 わたしも日頃の勤務態度の良さが幸いして無事に連休が取れ、死に物狂いのチケッティングも何とかなり、遂に!!! 遂に、本年五月に観て参りました。
 なお、詳細については別記事があるので、興味があるかたはそれをご覧下さい。

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 在韓中に四回観てきたんですが、すごく良かったです。
 基本的にトリプルキャスト起用で、つまり三人の韓国のイワン・カラマーゾフに会うことが出来たのですが、本当に感無量でした。
 『カラマーゾフの兄弟』と言えば、ロシアで1879年に文芸雑誌で連載が開始され、翌1880年に単行本が出版されたという作品です。それが約150年後に翻案作品として、キャラクターが三次元で生き生きと動いて歌うミュージカル作品として目の前に出現している幸福といったら……幸福といったら!!!!
 生きてるといいことがある。
 なお、今回の再演のイワン・カラマーゾフを下記に紹介しておきます。
1 キム・ジェボムさん(通称ボムワン。前回からの続投。演技が細やかで上手すぎる。非常に繊細なイワンを表現されており、緊張感がドストエフスキーの文体みたいなので、わたしの周囲からは「うわずり」とも呼ばれている。公演によって優しいイワンバージョンと冷徹なイワンバージョンがある。一人で二種類も……? 有り難うございます)
2 カン・ジョンウさん(通称カンバン。初演でもイワン役をされており、黒ハイネックを着てイワンを演じたことで我々を沸かせていた。足が長い。孤高な感じのするイワンで挑発的で偉そう。めっちゃ立ち姿が格好良くてえっちでよかった。もう一回観たい。えっちだ。有り難うございます)
3 オ・チョンヒョクさん(通称チョンバン。大穴だった。北野武映画に出てきそうなインテリのチンピラみたいなイワン。すごく胡散臭い。新解釈すぎて衝撃的だった。イワンなのに友達が多そう。トリックで山田と上田に成敗されそうなイワンだった。スメルジャコフは付いていく人間をよく考えるように。有り難うございます)

 ちなみに韓国と言えばそう、トレーディングカード文化です。
 韓国のミュージカル公演は三ヶ月くらいあり、集客のためにいろいろ催しなどもあるのですが、わたしが行った時期はちょうど劇中の一場面のトレーディングカードが貰えるというものでした。

 ちなみに、スメイワのトレーディングカードもありました。まさか推しカプのトレーディングカードを手に入れる日が来ようとはね……!!!!!
 もう19世紀露文学がジャンルの人間にとってはNEW WORLDどころか天変地異くらいの衝撃でした。これはわたしの副葬品にします。(なお四回観たので四種類ゲットしました。生きているといいことがある)


 なお、再演に向けて勉強してきた韓国語は役に立ったのか、という話ですが。
 劇中、わたしを混乱に陥れた例の「나의 이반(私のイワン)」の場面で、今度はイワン役のジェボムさんが挟み込んだアドリブがありました。イワンとスメルジャコフの二人の緊張感がマックスに高まった瞬間、イワンがスメルジャコフを抱き締めて言うんです。

 괜찮아…괜찮아. 내가 시킨 거야. 내가 시켰어.
 내가 한 거야. 잘했어…

 ああ、今日まで韓国語を勉強してきて良かっっ…………た!!!!!!
 わたしの耳は確かに台詞を拾い、理解することが出来ました。
 ちなみに原作のネタバレにもなるので、敢えてここでは訳しませんが、上記のシーンは衝撃的で「わたしは一体何を見せられているのか……」と呆然となる勢いでした。というか、会場全体が息を呑んでいるのが分かりました。本当に凄かった。「나의 이반」に匹敵する強火のアドリブ……役者の作品解釈が強すぎるんよ。
 ちなみに「原作のネタバレにもなる」とは書きましたが、原作小説にはこんなシーンはありはしませんからね!!! というかイワン・カラマーゾフはこんなこと言わないですよ。レベルでいうと「飛影はそんなこと言わないbot」くらい言いません。なんですって。でもいいの、同人誌だから……(翻案作品だよ)
 有り難う韓国、有り難うブラザーズカラマーゾフ。オタクは幸せです。
 ということで、めでたくブラザーズカラマーゾフ再演を楽しむことができました。以下は、帰りの飛行機内で感無量になったわたしのツイートです。

(セルフ翻訳)初めてNAVERでブカマを観て、一年半韓国語を勉強して、遂に韓国でブラザーズカラマーゾフを観ることが出来ました。本当に面白くて、必ずまた観たいです。日本では「戯雨(そばえ/こういう漢字表記もあるらしい)という単語があります。日が照っているけど、雨が降っているときの表現です。ブラザーズカラマーゾフのイワンは「戯雨」がよく似合うと思います。この世界で一人で立ち、(ここから次のツイートで切れてますが)雨に濡れている感じ。ブラザーズカラマーゾフTwitterのみなさん、韓国と日本のブカマファンたち、本当に有り難う。また会いましょう!

(今読み返すとじゃっかん間違ってるな……/と思うところに成長を感じることにします)


 
6 これから
 ということで、今年は一つの目標だった韓国でのミュージカル「ブラザーズカラマーゾフ」の観劇を果たした年でした。画面越しで、友人の翻訳を握りしめながら観た作品を海を越えて直に見に行くという体験は、韓国語学習という準備も含めて、非常に有意義でしたし、自分の可能性も広がった気がして非常にいい体験になりました。
 なお、この記事を書いている今、わたしの韓国語学習歴は二年ちょっと。爆速で韓国語をマスターする予定でしたが、未だレベルとしては中級程度で、読みも書きも話すことも聞くことも未だ自由にはできません。
 ネットで検索すると、一年で……とか二年で……という話も出てくるので、そういう方に比べたら別段上達は早くないし、依然伸びしろしかない状態と思います。しかし一方で語学習得には時間がかかる、と言ってくれる記事もあり、個人的にはコツコツ勉強していくしかないな、という気持ちです。
 と言うことで、次のブラザーズカラマーゾフ再演に向けて、元気に勉強を続けたいと思います。勝手な予想ですが、次はジェヨンさんとジュンフィさんが戻ってくる気がするんですよね……だとしたら観たい、何が何でも観たい。その時には、今よりもレベルアップできていたらなと思います。
 なお、「韓国語を趣味にすれば勝算はある」との話を最初にしましたが、今本当に語学の勉強が楽しくて、毎日時間を捻りだしては格闘しています。
 これまでミュージカルの台本を二冊半くらい訳したのですが、元々本が好きなこともあって翻訳作業が本当に面白いんですよね。なので、いつか出版翻訳をしてみたいなあという新たな夢も出来ました。
 来年のチャレンジは、トピック試験を再び受けてみることと、「82年生まれ、キム・ジヨン」の原書読書会に参加することです。頑張れわたし、わたしが応援しています!

 なお、韓国語学習者は多分みんな知ってるんじゃないかな、という韓国の諺があるんですが、非常に好きな諺なので、最後に皆さんに紹介して終わりたいと思います。
 시작이 반이다(シジャギ パニダ/始まりが半分だ)
 何かを始めることは大変だけど、始めるという第一歩を踏み出せたら、もうそれは半分やったも同然だぜ、やったね!!!という感じの力強い言葉です。
 今年何かを新しく好きになった方も、始められた方も、来年そうである方も、出会いや最初のチャレンジの一歩を踏み出せたら、もうそれは半分来たということなんですね。
 やってはみたけど、上手くいかないな……というときにこの言葉を思い出すと、なんだか元気になるのでお薦めです。もう半分も終わってるの? ってなって元気になる。ということで、今年もラスト半月あまりです。残りの半月も、来年もみなさんにとって良い日々になりますように。

  なお今年もわたしは「カラマーゾフの兄弟」の宣伝に余念がありません。

 年末年始のお休みに読まれてみては如何でしょうか? そしてスメイワの感想をわたしに下さい。

 長かった! ここまで読んでくださった方は本当にいるのでしょうか。あなた、あなたは本当に良い人ですね! 今日、あなたにいいことがありますように!

 明日の #ぽっぽアドベント2023 は necomimiさんです。
 トピックがまだ出てないのでどんな記事を読ませて頂けるのか分からないのですが、とても楽しみにしています!

 それでは。